フランス東部ジュラ地方に近いディジョン在住のワイン研究家 菅沼はるみ様より、リュネット・ジュラの原点であるフランスの様々な楽しい情報をお届けして参ります。
今回は第六弾。
フランスでのメロンについてのお話です。
今年は、太陽の恵みをたっぷり浴びて果物が豊作です。
桃、ネクタリン、アプリコット、プラム等いろいろある中で、夏の果物の王様と言えば、メロンです。
日本では高級なイメージですが、フランスではとても身近な存在。
旬になると1玉200円以下で、山積み状態で売られます。
フランスでは、メロンはデザートというより前菜です。
プロヴァンスのレストランで、半切りメロンを器にしたサラダが出てきて、その大胆さにビックリしたことがあります。
定番は、やはり生ハムでしょうか。
生ハムの塩味が、メロンの上品な甘さを引き立て、食欲を呼び起こします。
メロンはいつ頃フランスに入ってきたのでょうか。
伝説に包まれている部分はあるものの、14~15世紀頃ローマ近郊の村からフランスに入ってきたとされています。
その頃から南フランスを中心に栽培されていたようですが、当時は王侯貴族の特別な食べ物でした。
一般に知られるようになったのは、19世紀に入ってからのこと。
特に、カヴァイヨン産のメロンが有名になりました。
カヴァイヨンは南フランスの田舎町。
14世紀にローマ法王庁があったアヴィニョンのそばに位置しています。
「モンテ・クリスト伯(巌窟王)」「王妃マルゴ」の著作で知られる小説家・劇作家アレクサンドル・デュマをご存じでしょうか。
大の美食家だった彼には、こんな逸話が残っています。
図書館設立の為、カヴァイヨン市から数冊の本の寄贈を依頼された彼は、
「毎年12個のカヴァイヨンメロンを終生いただけるのであれば、私の著作4~500冊を差し上げましょう。」と返答。
1864年に交わされたこの約束は、彼が亡くなる1870年まで守られたそうです。
カヴァイヨンメロンが、当時それだけ貴重だったことを示しているのでしょう。
「カヴァイヨンメロンが私を魅了したように、私の作品が皆さんを魅了しますように。」
という彼の言葉が残っています。
20世紀に入り、カヴァイヨンでも、シャランテ種と呼ばれるオレンジ色の果肉のメロンが主流になりました。
現在のカヴァイヨンメロンはアレクサンドル・デュマの時代とは異なってきていますが、カヴァイヨンが今なおメロン名産地であることは変わりません。
毎年7月、町はメロン祭りで大いに盛り上がります。
現在フランスでは、3つのエリアでメロンが生産されています。
1)南仏プロヴァンス地方。カヴァイヨン市のあるヴォクリューズ県を中心とする6県がカヴァイヨンメロン生産地。現在、メロンのIGP(保護地域表示)を申請中です。
2)南西地方。ボルドーからスペイン国境に至るエリア。ケルシーのメロンは、最近日本にも輸入されるようになりました。
3)中西部からロワール川流域。大西洋岸に近いエリアでつくられています。フランスでは、例年5月から9月までメロンの出荷が続きますが、今年は6月の記録的猛暑で一気に熟し、サイクルが早まりました。9月になる前に出荷終了となるのでは、と言われています。
ブルゴーニュのぶどう畑が、1年で最も活気あふれる時期が近づいてきました。
9月上旬からぶどうの収穫が始まります!