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【フランスたより】 Vol.14#フランスのチーズについて

フランス東部ジュラ地方に近いディジョン在住のワイン研究家  菅沼はるみ様より、リュネット・ジュラの原点であるフランスの様々な楽しい情報をお届けして参ります。

 

 

今回は第14弾。

 

 

フランスのチーズについてのお話。

 

修道院の修道士から直接お話を聞くことができました。

 

 

 

 

 


 

 

 

フランスには、数百種類ものチーズがありますが、その中で、私が特に気に入っている地元のチーズをご紹介します。

 

シトー派修道院でつくられているアベイ・ド・シトー、修道院名がそのままチーズ名になっています。

 

今回、ジャン・クロード修道士から、直接お話を伺いました。

 

 

 

ジャン・クロード修道士

ジャン・クロード修道士

 

 

このチーズは、直径約15㎝、厚さ約3㎝、重さ700gほど。

外皮を塩水で洗いながら4週間熟成させてつくります。

ほどよい弾力があり、くせがなく、クリーミーでなめらか。

しばしば、サヴォワ地方のチーズ、ルブロションの親戚と言われます。

 

 

生産者は、ブルゴーニュのサン・ニコラ・レ・シトーにあるシトー派修道院のみ。

修道士自ら、モンベリアール種の乳牛80頭を飼い、年間約12万個のチーズを生産しています。

 

 

他から牛乳を買わず、牛を飼うところからチーズづくりまで一貫生産する高級チーズをフェルミエと言いますが、シトー派修道院は、コート・ドール県内で最も大きなフェルミエ・チーズ生産者です。

 

 

 

アベイ・ド・シトー

アベイ・ド・シトー

 

 

1098年設立されたシトー派修道院には、長い歴史があります。

 

 

修道士たちは、「祈り、働け」という聖ブノワの戒律をもとに、清貧を旨としていました。

アベイ・ド・シトーチーズの外装には、「PRIERE祈り、TRAVAIL働け」という彼らの標語が書かれています。

 

包装紙の真ん中に「PRIERE&TRAVAIL」という文字が

 

 

シトー派修道院は12世紀に大きく拡大し、欧州各地に3000以上もの修道院を持つようになりました。

 

 

クロ・ヴージョを筆頭とする極上のぶどう畑を多数所有し、そのワインづくりにおいて多大な貢献をしたことが知られています。

ブルゴーニュ・ワインの今の隆盛はシトー派修道院なしには考えられません。

 

 

1789年のフランス革命後、フランスの全ての修道院は国有化され、修道士達は追放。

建物やぶどう畑は分割され、民間の手に渡ります。

 

 

それから約100年後の19世紀末、追放された修道士達の中で、トラピスト会修道士がこのシトーの地に戻り、活動を再開しました。

トラピスト会は函館にもあり、そのクッキーをご存知の方も多いでしょう。

戻ってきた修道士達が自活するために始めたのがチーズづくりです。

 

 

当初はグリュイエールのようなチーズをつくったもののうまくいかず、1925年頃から今のようなチーズになったと言われています。

900年以上に及ぶシトー派修道院の長い歴史において、チーズづくりは比較的最近のこと。

その後少しづつ生産を増やし、今ではこの修道院の最も大きな収入源となっています。

 

 

 

シトー派修道院

シトー派修道院

 

 

 

修道士たちは、日々祈りを捧げ、それ以外の時間に牛の世話やチーズづくりをしています。

 

 

こう書くと、チーズづくりは片手間のように思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

チーズの更なる品質向上の為、2010年に生産設備を一新し、コンピューター管理を導入。

清潔でモダンなアトリエで、チーズがつくられるようになりました。

 

 

当初この新しいアトリエでは思うような味にならず、数トンものチーズが廃棄処分されたとか。

品質にこだわる修道士達の懸命の努力が実り、現在では生産量をはるかに上回る注文を受けるようになりました。

特にクリスマス時期はすごい引き合いがあるそうです。

しかし、「修道院はチーズ工場ではない。修道院の本来の役割とは、祈りを捧げることである。」ということで、生産量をむやみに増やすことはしません。

他のチーズに比べると価格はやや高めですが、その品質の素晴らしさから、とても人気があります。

 

 

 

「シトーのチーズ?美味しいけど、30年前は今よりもっと美味しかったなぁ。」

年輩の地元フランス人は言います。

 

 

それに対し、ジャン・クロード修道士は、

「昔のシトーのチーズは外皮が厚く、苦みがありました。今の方が30年前に比べて品質が上がっていると思いますよ。」とのこと。

 

 

 

 

2009年にびっくりするような出来事がありました。

 

 

ノルウェーにあるシトー派修道院MUNKEBYが500年ぶりに再建され、ブルゴーニュのシトー派修道院から4人の修道士が移住。

彼の地でチーズをつくり始めました。

そのうちの一人は当時81歳、サン・ニコラ・ド・シトーでチーズづくりを50年以上経験した修道士です。

81歳で異国に移住する勇気、そして現在なお現役でチーズづくりをしているという話に、とても驚かされました。

 

 

寒いノルウェーでどんなチーズがつくられるのか、興味津々。

ジャン・クロード修道士に伺ったところ、、

「シトーのチーズに似たタイプです。もしかしたら、品質は既にノルウェーのチーズの方が上かもしれませんね。」

と笑みを浮かべていました。

 

 

 

ブルゴーニュの、このアベイ・ド・シトーチーズは日本でも入手できるようになりました。

しかし、まだまだ流通量は少ないので、フランス旅行の際に、ぜひお試しください。

 

 

 

 

 

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